企画・編集・制作工房 株式会社本作り空 Sola
 

 

2017.12.29

モルモット「オルガ」の物語を日本の子どもたちに!

 
『くまのパディントン』の作者マイケル・ボンドさんが2017年6月に91歳で亡くなりました。
ボンドさんの書いた『モルモット オルガの物語』の本作りを進めているなかでの訃報でした。
12月に無事PHP研究所から刊行された2冊の『オルガ』。
訳者のおおつかのりこさんと画家のいたやさとしさんに『オルガ』への思いを語っていただきました。
どうぞみなさん、空想好きでおちゃめなモルモットと友だちになってください。
 


  ⬇️画像をクリックすると拡大します。
 
 
『モルモット オルガの物語』 
マイケル・ボンド作/おおつかのりこ訳/いたやさとし絵
PHP研究所 
    
 
  
 見返し                  本文

 

 
『オルガとボリスとなかまたち』 
マイケル・ボンド作/おおつかのりこ訳/いたやさとし絵
PHP研究所 
    
 
  
 見返し                  本文

 

 
オルガを訳して
おおつかのりこ
 
オルガ・ダ・ポルガは、だれもが愛さずにはいられないモルモット。その魅力はなんといっても、その類まれなる想像力にあります。小さな話の種が、オルガの小さな頭のなかで大きく大きくふくらんで壮大な物語にそだっていくさまはみごとです。その想像力はオルガの好奇心に火をつけ、オルガの前向きな生き方の原動力にもなっています。
この元気な主人公にはモデルがいます。作者、マイケル・ボンドさんの娘のカレンさんがかっていたモルモットです。物語がかかれたのは50年ほどまえですが、じつはボンド家にはその後も何代もにわたる「オルガ」がいるそうです。数年まえもボンドさんは、イギリスの「モルモット・マガジン」誌に、何代目かのオルガの話を連載していました。
こうして作者が日々観察しながらつづった本書は、等身大のモルモットという事実に裏づけられることで躍動感のある動物ファンタジーとなりました。負けん気が強く、自信家のオルガですが、無邪気でどこか抜けたところがあるのは、パディントンにもパンプルムース氏にも共通しているボンドさんの真骨頂。そこからにじみでるユーモアが物語の味になっています。
さて、この物語の背景にはもうひとつの事実があります。それは、イギリスの自然、それに文化や習慣です。オルガの日常はイギリスの牧歌的な空気にあふれています。車で遠出をすれば、窓の外をながれる景色は緑したたる野原ですし、オルガの小屋からは四季折々の眺めがたのしめます。オルガの食べるタンポポ、シロツメクサ、ノボロギクは日本でもおなじみのもの。読者はこれらの野の花をおいしそうに口にするオルガを、やすやすと頭におもいえがくことができるでしょう。
一方、オルガの物語には(そしてパディントンの物語にも)、イギリス独自の文化や習慣がでてきます。どちらも物語もいかにもイギリス的なのはそのためです。物語をより楽しむために、ここで日本人になじみのうすいいくつかについて説明しましょう。
 
●ガイフォークスデイ
今から400年ほどまえのことです。国の宗教であるプロテスタント教徒に反対するカトリック教徒が、国王ジェームズ1世を暗殺しようと、国会議事堂の地下に大量の火薬を用意しました。爆破の決行日は115日。けれども、なかまが裏切り計画をしらせたために、火薬に火をつけようとしていたガイ・フォークスという男が見つかって逮捕されました。ほかのなかまもつかまり、全員が処刑されました。そこで王の命がたすかったこの日を、ガイフォークスデイとして、みんなでおいわいするようになったのです。
115日が近づくと、子どもたちは藁や古着でつくった人形を荷車にのせて近所をまわり「ガイのために1ペニーを」といってお金を集めます。そして5日の夜にはそのお金で買った花火をし、大きなかがり火に人形を投げ入れて焼きます。また各地で花火大会ももよおされます。もっとも現在は花火大会がこの行事の中心となっているようです。
クマのパディントンも、『パディントンのクリスマス』(福音館書店)のなかで、ガイフォークスの人形をつくり、花火をしています。
 
●あなのなかのヒキガエル
イギリス人さえ奇妙だといっている、へんな名前の料理です。じつは200年もまえからあって今でもよく食べられています。ただし、むかしは「あなのなかのハト」といわれたり、ソーセージでなく牛肉がつかわれていたりと時とともに変わってきています。
つくりかたはかんたん。バターでやいたソーセージを深皿にいれて、そこに卵と小麦粉と牛乳をまぜた生地をながしこみ、オーブンでいっきにやきます。すると、生地がどんどんふくらんで、できあがったときにはソーセージが生地にほとんどうまってしまいます。これが、あなから顔を少しだけだして、虫をまちぶせるヒキガエルのすがたににているからこの名がついたという人がいます。けれども、ほかにもたくさんの説があり、まるでオルガの名前のついた理由がわからないように、本当のことはわからないようです。
 
●サリーのピューマ
オルガたちがおそれている「サリーのピューマ」は、じっさいにあった話です。オルガの物語が書かれる10年ほどまえから、サリーという地域で大きなネコを見たという人がではじめました。やがて牛が殺される事件がおきると警察が調査をはじめ、べつなところで見つかった足跡を動物園の職員が調べてピューマのものとみとめます。その後、何人もが写真をとりますが、どれもぼんやりとしかうつっていません。サリーのピューマはいるのかどうか謎はふかまるばかり。いまだに本当のことはわかっていません。これで思いだすのはネス湖のネッシー。謎の生き物のうわさ話は、イギリスの文化といえるのかもしれません。
 
こういった、文化のちがいだけでなく、ボンドさんが自在にあやつることば遊びも、訳でそのまま味わってもらうことができない要素です。それでも、できるだけ日本語で楽しめるよう頭をひねったつもりです。くすっと笑っていただければうれしいです。
これまで世界のたくさんの子どもたちが、パディントンやオルガの物語を夢中になって読みました。かくいうわたしも、子どものころペルーという国、マーマレードという食べ物、そして本のページをめくるわくわくした気持ちをボンドさんにおしえてもらいました。あらためて空の上のボンドさんに、心からの感謝の気持ちを送りたいです。そして、これからも多くの子どもたちが、オルガをはじめとするボンドさんが生んだ本のなかまとであうことを願っています。
 


 
オルガを描いて
いたやさとし
 
オルガを描くために、まずモルモットのことを調べました。
写真だと全体がボテッと丸くて頭の後ろのところがポコッともりあがって見えて、なんだか毛皮のお手玉みたいでした。
それに思ったより種類が多くてなかなかイメージが定まりませんでした。こまりました。
動物園に見に行きました。広めの部屋のなかに何十匹ものモルモットが、えさを食べたり寝そべったり走り回ったりなんとも楽しげでした。ここにもいろんな種類がいましたが、見ているうちにオルガのモデルが何匹かにしぼれてきました。スケッチしながら、顔だけじゃなくて後ろ姿とか横になったときの伸ばした後ろ足とか、この生き物の愛らしいところもたくさん見つかりました。気になっていた頭の後ろの「ポコッ」は、やっぱり本物にもありました。この「ポコッ」がダダダッと走る姿をブタそっくりに見せるのに一役買っていました。モルモットは英語だとguineapigっていうそうです。なるほど納得です。
本物を見てモルモットのもっそりした感じがつかめたので、本番用の紙を使ったりしながらさらにスケッチを描きました。おもしろくかわいく描くと決めていたので、デフォルメの加減や毛の描き方も工夫しました。最後まで迷ったのは顔で、どんな目にするか(黒い大きな目とか横長のちょっといじわるそうな目とか)いろいろ試しました。ユーモラスな感じも出したかったので、鼻を大きくして鼻の穴もしっかり描くことにしました。
生き物を描くときはこちらに話しかけてくるように描きたくて「話してください、話してください……」と心のなかで祈りながら描いています。
マイケル・ボンドさんのお話、おおつかのりこさんの訳のオルガはたくさんの表情があってすごくおもしろくて、挿絵ものって描くことができました。
仕上がりもいつもより楽しそうになったと思っています。オルガが読者のみなさんに話しかけてきたらうれしいです。
たいへん残念ですが、この本を見ていただくことなくお亡くなりになってしまったマイケル・ボンドさんのご冥福をお祈りいたします。
 


 
マイケル・ボンド
1926年生まれ。47年から作家活動をはじめる。58年にはじめての子どもの本『くまのパディントン』で人気作家となる。主人公の「オルガ・ダ・ポルガ」は娘のカレンのモルモットがモデルになっている。おとなの本に「パンプルムース氏」シリーズがある。2017年没。
 
おおつかのりこ
福島県で生まれ育つ。訳書に『ルルと魔法のぼうし』など、共訳に『アメリカ児童文学の歴史』など、共著に『社会のしくみ図鑑』など。やまねこ翻訳クラブ会員。
 
いたやさとし
1999年、2000年にイタリア・ボローニャ国際絵本原画展入選。挿絵に「大きなクマのタハマパー」シリーズ、『月あかりのおはなし集』などがある。
 
 

 

2017.11.25

野本寛一先生が2017年秋の叙勲で瑞宝重光章を受章されました

 
2017 年秋の叙勲で、野本寛一先生(近畿大学名誉教授  80 歳)が瑞宝重光章を受章されました。
野本先生は 2015 年度の文化功労者。本作り空 Sola で、 4 冊の本をご一緒しました。
新しい企画も進行中です。
野本先生は民俗学者で本物のフィールドワーカー。現在も日本中を歩き、調査し、日々研究を続けられています。
 
⬇️野本寛一先生の本のご紹介(画像をクリックすると拡大します)
 
ー2016.7刊行ー
    
『季節の民俗誌』            『季節の民俗誌』直筆原稿         
野本寛一 著作
玉川大学出版部                
四六版上製・468ページ              
 
ー2013.11刊行ー

『日本の心を伝える 年中行事事典』
野本寛一 編
筒江薫・谷阪智佳子・岩城こよみ
岩崎書店
A4判変型・上製・192ページ
 
ー2013.10刊行ー

『暮らしの伝承知を探る』
<フィールド科学の入り口>シリーズ
野本寛一・赤坂憲雄 編
玉川大学出版部
A5判並製・224ページ
 
ー2011.7刊行ー
               

『食の民俗事典』                          函入り
野本寛一 編
柊風舎
A5判上製函入り・664ページ
 

2017.10.28

『ホテルやまのなか小学校』が新聞に掲載されました

 
『ホテルやまのなか小学校』(著者:小松原宏子 画家:亀岡亜希子)
が、新聞に掲載されました。よろしければ、ぜひご覧ください。
⬇️ 画像をクリックすると、拡大して読むことができます。
 
読売新聞夕刊 2017年10月14日(土)

 
 
毎日新聞近畿 2017年9月22日(金)

2017.9.2

『ようこそロイドホテルへ』10月刊行記念レセプション 参加者募集のお知らせ


本作り空Sola企画「未来への記憶」シリーズの
第2弾『ようこそロイドホテルへ』の刊行を記念して、
オランダ王国大使館でのレセプションを企画しました!

 
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絵本「未来への記憶」シリーズ第2弾
『ようこそロイドホテル』10月刊行記念レセプション
 
日時:10月20日(金)18時半〜
場所:オランダ王国大使館 出島ラウンジ
参加費:無料(軽食付き)

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どなたでも入場無料でご参加いただけます。(子供も参加可能)
参加のお申し込みは「本作り空Sola」へ直接ご連絡ください。

→メールアドレス:sola1219@icloud.com
みなさまのご参加お待ちしております。

おかげさまで定員に達しましたので、締め切らせていただきました。
お申し込みありがとうございました。
会場の都合で、お申し込みいただきながら、
お断りせざるを得なかったみなさま、
本当に申しわけございませんでした。
またの機会に、ぜひよろしくお願いいたします。

2017.7.29

Facebook & Twitterを始めました。

 
本作り空Solaをみなさんに知っていただきたくて、遅ればせながら
FacebookおよびTwitterを始めました。
 
・本作り空Sola Facebookページ
 本作り空Solaのページを作りましたので、「いいね!」を押していただけると嬉しいです。
 


 
・本作り空Sola Twitterアカウント
 本作り空Solaのアカウントを作りましたので、フォローしていただけると嬉しいです。
 

2017.7.29

ブログについてのお知らせ

 
・STAFF BLOG
 
2017年3月よりリニューアルいたしました本作り空Solaブログを
「STAFF BLOG」として名称を変更いたしました。
 
本作り空Sola STAFF BLOG
 
・LEADER’S BLOG
 
本作り空Sola代表によるブログを「LEADER’S BLOG」として
新しく開設いたしました。よろしければぜひご覧ください。
 
本作り空Sola LEADER’S BLOG
 

 

2017.7.1

「Sola1冊の本プロジェクト」から本が巣立ちました!

 
「Sola1冊の本プロジェクト」から巣立った新刊4冊をご紹介します。
 
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『ホテルやまのなか小学校』 aaaaaaaaaaaaaaaa 『トントンの西安遊記 中国』
小松原宏子作                  張武静/みせけい 文・写真
PHP研究所                   玉川大学出版部
A5判・上製・160ページ              B5判・上製・40ページ
 
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『ひよっこダンサー、はじめの一歩 南インド』 a 『まちの市場で買いものしよう トルコ』
井生明 文・写真                鈴木郁子 文・写真
玉川大学出版部                 玉川大学出版部
B5判・上製・40ページ                B5判・上製・40ページ
 
Sola1冊の本プロジェクトとは
2004年に「本作り空Sola」を立ち上げ、2013年に法人化し、
おかげさまで本作りを続けてくることができました。
会社の仕事とは別に、ここしばらく「Sola1冊の本プロジェクト」という小さな集まりをもっています。
ゆっくりとした歩みですが、長く続けていきたいとなと思っています。
今回ご紹介した4冊は、このプロジェクトで企画検討し、巣立っていきました。
 
 
*Sola1冊の本プロジェクト
Sola1冊の本プロジェクトは、2015年4月から隔月で集まりを続けています。
最初の2回は、新座市の檀上の自宅でおこない、3回目からさいたま市の杉山きく子さん(キラキラ読書クラブ)の風渡野文庫をお借りしています。
メンバーは、公共図書館司書、学校司書、翻訳者、画家、作家、編集者など十数名。
毎回、検討事項を決めて担当者が発表したり、ゲストスピーカーを招いてお話を聞くほか、「お楽しみプログラム」と称して、映像やブックトークの実演を見たり、読書会などもおこなっています。
 
 
「Sola1冊の本プロジェクト」は以下の2つの活動の柱を持っていきたいと考えています。
 
1「1冊の本」の発掘
・児童書作品(創作、ノンフィクション、翻訳)の発掘
・復刊作品の発掘
 
2「1冊の本」の普及
「すべての子どもたちに本を」
・さまざまな要因で本が届いていない子どもたちへの読書支援
・子どもたちに本を手渡す大人への支援
 
今後、Solaのブログで活動を紹介していければと思います。

 

2017.1.7

本年もよろしくお願いいたします

 
旧年中はいろいろとお世話になり、ありがとうございました。おかげさまで、1月4日に会社の4周年を迎えました。
 
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今年は諸般の事情により、新年のご挨拶を失礼させていただきました。この場を借りて賀状をくださったみなさまにお礼を申しあげます。
 
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昨年からスタートした「Sola1冊の本プロジェクト」の試みから、3つの企画が実現しました。いずれも子どもの本です。写真絵本の6冊シリーズ、創作絵本、創作読み物を、それぞれ今年から来年にかけて刊行していく予定です。今年こそホームページ上のブログで活動報告をあげていきます! どうぞよろしくお願いいたします。