第4回(最終回)
── 2016年ニュージーランドのオークランドで開催されたIBBY国際大会ではどの国の方と話されましたか。少しだけお教えください 。
セルピル・ウラル(以下、S・U) 以前からIBBYの大会で見知っていた、オーストラリア、アメリカ、メキシコ、デンマーク、パレスチナ、イラン、ロシアなどの研究者と意見交換をすることができました。このところ、どこかで子どもの本の国際会議があれば必ず参加するようにしていたのと、2014年からIBBYの理事のひとりとして活動させていただいているので、多くの国の研究者や子どもの本に携わる人たちと親しくなることができて、嬉しいことです。
今年は新しく、アラブ首長国連邦、チリ、オランダ、ニュージーランドの方たちと知り合うことができました。特に開催国のニュージーランドの方たちとは、多く意見交換ができましたね。
残念ながら、日本の方と新たにお話しする機会は見つけられませんでした。
── では、以前のIBBY大会のホスト国ともお話しできたのですね 。
S・U メキシコの代表の方とお話しできたのは大きかったです。大会の準備や設営などについて、どのような活動を行ったのかを聞きました。
(注:2014年の第34回IBBY国際大会は、メキシコの首都メキシコシティで開催された)
── ニュージーランドの印象、また大会で見られたニュージーランドらしさについてお教えください 。
S・U ニュージーランド、特に大会が開催されたオークランドはとても清潔で、整えられた街であると思います。国としては、環境問題に深く取り組み、それだけに自然が溢れ、自然に囲まれていました。
© Serpil URAL
大会では、ニュージーランドに先住していたマオリの人々の文化の紹介に多くの力を注いでいました。ニュージーランドの作家、教育者、出版関係者など多くの発表者が登壇して、文化の発信を行っていました。マオリの人々について、ニュージーランドという国について、深い知識を得ることができたと思います。
ホテルと大会会場までの距離や配置も考えられていて、行き帰りで、オークランドの街をよく見ることができました。
── 大会の一日はどのように過ぎるのでしょう。簡単でよいので、お教えください 。
S・U まず、朝起きてからその日の大会のプログラムを確認します。色々な発表が行われていますから、どの講演に行くかは事前に決めてあるのですけれど、もう一度、時間と場所を見ておかなくてはなりません。それから、ホテルのレストランで朝食をとって、会場までは歩いて行きます。
会場に着いたら、何より先に、私たちÇGYD(Çocuk ve Gençlik Yayınları Derneği/児童・ヤングアダルト図書協会)のブースに向かわなくてはなりません。テーブルの上のポスター、パンフレット、しおりのストックを運び出します。並べおわると――並べながら、ということもありました――ブースを訪ねてくださった方たちの質問に答えます。そうこうしているうちに、聞きたいと思っていた講演が始まる時間になりますから、そこはブースから席を外します。
講演が終われば、基本的にはまた、自分たちのブースに戻り、みなさんと話しをします。
お茶やコーヒー、お昼の休みの時間には、見知った友人たちと話し、新たに知り合った方たちに挨拶をして、色々と意見交換をします。それから、ニュージーランドの出版社が出展しているブースをすみずみまで見て回り、ニュージーランドの本についての知識を詰め込みます。
夕方、大会が終了し会場から出ると、友人たちと一緒に散歩をしたり、食事に行ったり。ホテルまでは一緒に歩いて、ひとりでゆっくりと夕飯を食べたり。夕食後はホテルの部屋で、翌日のプログラムを見て、どの講演に行くべきか、または行きたいかを決めます。
そして楽しみに取っておいた、新しく手に入れた本を読んでから就寝。これが大会期間中の私の一日の送り方でした。
── ありがとうございました。これからは、大会の実施に向けて忙しい毎日が続きますね 。
S・U はい。成功させて、良い大会にしたいと思います。そういえば、日本の方がたが大会を運営するとなったら、きっと素晴らしいものになるだろうな、といつも思います。日本人は細かな点までよく考え抜く人たちだと思いっていますから。国際大会、というものを成功させようと思ったら、やはりそういう基本の点が大事なのですよ。
── 2016年、IBBY大会についての記事はこれで終了となります。2018年のイスタンブル大会について、お話を聞ける日を楽しみにしています。
Serpil URAL(セルピル・ウラル)
1945年、トルコのイズミル生まれ。イスタンブルのウスキュダル・アメリカン高校、アメリカのブラッドフォード・ジュニア・カレッジ、イスタンブルの公立芸術学院(現在のマルマラ大学芸術学部)を修了。広告会社でコピーライター兼グラフィックデザイナーとして活動する。1978年から児童書に携わり、1980年にはミュンヘン国際児童図書館で長期の研修を受ける。1986年、第5回野間国際絵本原画コンクールで佳作を受賞。トルコ国内でも1997年にルファット・ウルガズ笑い話文学賞、トルコ・イシ銀行児童文学大賞を受賞。IBBY会員。
ウィスコンシン州国際アウトリーチコンソーシアムでの児童文学講演会で2003年の講演演者を務めるなど、国際的にも広く活動している。
©Serpil URAL