ハッヴァ・ムトゥルさんはトルコの児童文学作家で、スペイン語-トルコ語の翻訳家でもあります。以前、現代トルコ人の読書との関係についてうかがったとき、ご自身の作品を子どもたちに届けるためにどういった活動をしているのかを話してくださいました。
トルコは貴重な世界遺産を有する国のひとつです。どの遺産も、アナトリアという非常に多岐に渡る文明・民族・宗教が混在した学術的にも肥沃な土地に存在し、紀元前から人類が積み上げてきた歴史の証明となっています。トルコは、これらの遺産をより深く研究し、後世へと伝えていく責任を負っています。しかし、ハッヴァさんは、この重要な点がトルコ国内で十分に広まっておらず、子どもたちにも知識として伝えられる大人が少ないと感じていました。そこで書いたのが、トルコ国内の世界遺産を舞台にしたファンタジーです。
トルコの未来にとって重要であり、世界的にも貴重な遺産の存在を子どもたちに伝えたいと精力的に執筆を続けるハッヴァさんの活動についてお話していただきます。
第1回 トルコ児童作品と地域の関わり(1)
第2回 トルコ児童作品と地域の関わり(2)
●著者紹介
鈴木郁子(すずき・いくこ)
「トルコ文学を学ぼう」と決め、出版関係の仕事を辞め、再び学生になるためにトルコ入りしたのは、2006年4月のこと。日本の大学で学んだのは日本の上代文学で、トルコ文学のことは何も知らなかった。
語学学校を経て、トルコはイスタンブルのマルマラ国立大学大学院に合格したのが2008年9月。トルコ学研究所の近・現代トルコ文学室に籍を置き、19世紀末から現代までのトルコ文学を学んできた。トルコ語で書いた修士論文のテーマは『アフメット・ハーシムの詩に見える俳句的美意識の影響』。帰国後も、近・現代トルコ文学研究、翻訳、通訳、講師など、トルコ語に携わる。児童書を含め、トルコ文学を少しでも日本に紹介しようと動いている。