企画・編集・制作工房 株式会社本作り空 Sola
 

第2回


──まずは学校との取り組みについておうかがいします。

H・M トルコにある世界遺産を子どもたちに紹介・説明してほしいとあちこちの学校に呼ばれるようになったころ、シリーズは3冊めをむかえていました。『 Pamukkale, Leylek Yuvası(パムッカレにはコウノトリの巣)』です。3冊の本は、各学校の読書活動に登場するようになります。こういった学校主催の読書活動では、わたしの本を読んだ生徒たちと意見交換をしたり、そのあとでサインをしたりします。いろいろ学んだ、頭の回転の速い、そして何より本の内容に興味をもった子どもたちが瞳を輝かせて投げかけてくるおもしろい質問に答えることは、わたしにとって楽しみであり喜びです。


©Havva MUTLU
©Arkeoloji Sanat yayınları Turizmcilik San. Ve Tic. Ltd. Sti.

こういった読書会では、トルコ国内の世界遺産について長いお話をします。これまできちんと紹介されてこなかったため、トルコ国内でも知られていないこのテーマには、教師も非常に興味をもちます。こうして活動が実を結ぶことは、また別の喜びです。


©ikuko suzuki
パムッカレはトルコ語で「綿の城」という意味。

──子どもたちが暮らす施設も訪問されました。

H・M 2015年には、コルンジュク基金のボッルジャ子どもの村(Koruncuk Vakfı-Bolluca Çocuk Köyü)の招待を受けました。ここは保護が必要な子どもたちのための「子どもの村」です。人生を何かが欠けたところからはじめなくてはならなかった子どもたちにとって、このような子どもの家と出会えたことは幸せだとよくわかります。食事、健康、教育と同様に心療の面も重要視されています。子どもたちはみな輝いていて、自分に自信があり、友人たちや周囲の人たちとも健全な関係を築いています。
子どもたちにトルコの世界遺産について話してほしいと招待されたのです。本と愛情をカバンにつめこんで出かけました。世界一楽しい子どもたちとお話をし、世界遺産について紹介をしました。会の最後には子どもたちにちょっとした質問をして、本を贈りました。わたしのお話に彼らがはしゃいで、興味をもってくれた。それが何よりです。


©ikuko suzuki
わき出す温泉にふくまれた炭酸カルシウム(石灰)が沈殿して白くなる。

──日本の読者へメッセージをお願いします。

H・M トルコで最初の世界遺産を舞台にした作品についてお話ししました。この作品が、教師、両親、そしてもちろん子どもたちの手に届き、読まれ、トルコ社会に受け入れられていくのをこれからも見続けていきたいと思います。そして、じつはわたしの娘エシンは日本学研究者です。彼女からいろいろと聞き、本当にすぐそばに感じられる日本という国にも、わたしの本が届けばいいな、と思っています。いつか、わたしの作品を日本の皆さんが手にしてくださることはあるかしら、楽しんでくれるかしら、と。それがわたしの夢です。
イスタンブルから日本へ、いっぱいの愛情をこめてお話しさせていただきました。

──ありがとうございました。最後に、ハッヴァさんの世界遺産シリーズのタイトルと、スペイン語翻訳家としてトルコ語翻訳を担当された作品をご紹介します。

著 作
İstanbul’un Dört Tarafı Mercandan /イスタンブルは宝石箱(2014)
Kapadokya, Bilemedin Zıngırbeş /カッパドキアで妖精の結婚式(2015)
Pamukkale, Leylek Yuvası /パムッカレにはコウノトリの巣(2015)

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©Arkeoloji Sanat yayınları Turizmcilik San. Ve Tic. Ltd. Sti.

Divriği, Zümrüdüanka /ディブリーイの不死鳥(2016)
Edirne, Gün Doğmadan Neler Doğar /エディルネに上がる希望の星(2016年9月発売予定)
Troya, İda’dan Kazdağlarına /トロイアには古代を知る山がある(作業中)
Safranbolu, Tosbağa Hanım/サフランボルの 亀のお嬢さん(作業中)
Hattuşaş, Dördüncü Boyut/ハットゥシャシュには四次元の入り口(作業中)
※以降、クサントスとレトゥーン、ネムルト山、チャタルホユック、ベルガマ、ブルサ・ジュマルクズック村が舞台となる予定。

翻訳作品
・ローラ・エスキベル『 Como agua para chocolateAcı Çikolata)』(1989、未邦訳)ジャン出版
・ホルヘ・マリオ・ペドロ・バルガス・リョサ『 El Hero DiscretoKetum Kahraman/つつましい英雄)』(2013)ジャン出版
・カルラス・サラ・ヴィラ『 Buenas noches, Juliaİyi Geceler Julia)』(2008、未邦訳)ジャン児童出版、『CORNELIUS Y LA DESPENSA DE IMPOSIBLES( Cornelius ve İmkansızlar Ambarı/コルネリウスとありえないことの店)』(2010)ジャン児童出版
・『 La vida de Lazarillo de Tormes y de sus fortunas y adversidadesTormesli Lazarillo/ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯、およびその幸運と不運)』(1554、作者不詳)アルケオロジー・ヴェ・サナト出版
※斜体( )内がトルコ語のタイトル

 
 
 
 



HAVVA MUTLU (ハッヴァ・ムトゥル)
 
トルコの作家、スペイン語翻訳家、教師(トルコ語)、トルコ共和国文化観光省公認スペイン語観光ガイド。
トルコの世界遺産を舞台にした児童向け作品(11歳以上推奨)を、アルケオロジー・ヴェ・サナト出版から発行。ファンタジーと研究を融合させた著書は、広い読者層に受け入れられている。作者の研究と知識の集大成である著作は、世界遺産、トルコの文化と伝統を子どもたちに楽しみながら学ぶ場を与えたといえる。
1988年にスペイン語観光ガイドをはじめる。1990年代にトルコの国営放送TRT、その他民放局で翻訳作業に従事。メキシコ、アルゼンチンの映画作品をトルコ語に翻訳した。ほか、各機構において、翻訳通訳作業に携わる。2010年にノーベル文学賞を受賞したホルヘ・マリオ・ペドロ・バルガス・リョサ(ペルー)の『 El Hero Discreto (つつましい英雄)』をトルコ語に翻訳し、ジャン出版より発売された。
いちばんの楽しみは、「おばあちゃん」として自身の作品を孫たちといっしょに読みながら空想の旅に出ること。
 
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