──児童・ヤングアダルト図書協会の理事会についてご説明ください。
セルピル・ウラル(以下、S・U) 児童・ヤングアダルト図書協会(ÇGYD)の理事会は、総会でおこなわれる投票によって選ばれた5人からなっています。理事長、書記、会計と、委員がふたりです。さらに、このうちのひとりが諸事情によって理事会を離れることになった場合の、席の空白を防ぐため、5人の代替委員が選出されます。
理事会会合は、基本的に月に1回(夏の休暇期間には2、3か月に1回になりますけれど)。会合では、図書協会員からの意見をもとに、現在の児童図書に関する活動ビジョン、現在の図書協会の活動状況、新たな協会員についてなどが話しあわれます。また、IBBYの国際アンデルセン賞、IBBYの名誉会員にどの作家、挿絵画家、作品を推すべきかや、国際的なブックフェアへの参加などの詳細も話しあいます。
──現在の理事会のメンバーを教えてください。
S・U 現在の理事会は、2015年11月21日の総会で選出されました。副理事はエブル・アッカシュ・クセイリ(児童文学作家)、書記はフアット・オメル・アルタイ(児童書出版)、会計はメリケ・ギュンユズ(児童文学作家)、委員にアイセル・ギュルメン(児童文学作家)です。そして、理事長はなんと私、セルピル・ウラルが務めさせていただいています。
理事会の任期は基本的に3年です。
──先ほど少しお話が出ましたが、児童・ヤングアダルト図書協会が参加している国際的な児童文学賞についてお願いします。
S・U まず、1年に一度選ばれるIBBYの国際アンデルセン賞ですね。毎回この賞に推薦する作家、挿絵画家を選出しています。スウェーデン政府主催による、スウェーデンの命児童文学作家アストリッド・リンドグレーンの名を冠した、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞(ALMA)へも、トルコの作家、挿絵画家を推しています。
トルコからの候補者は、諮問委員会と面接をした後、理事会によって選出されます。
これまで国際アンデルセン賞に推薦した作家は、セヴィム・アク、ムザッフェル・イズギュ、アイラ・チュランオール、ギュルテン・ダユオール、セルピル・ウラル。挿絵画家はジャン・ギョクニル、ムスタファ・デリオール、ナザン・エルクメン、サーデット・ジェイラン。ALMAへは、アイトゥル・アカル、セザ・クトラル、ヤルヴァチ・ウラルなどです。
──それでは、トルコ国内で児童・ヤングアダルト図書協会が主催、選出している児童文学賞はありますか?
S・U まず、児童・ヤングアダルト図書協会では、2003年から毎年、その前年に出版された児童図書、ヤングアダルト図書から「その年の1冊」を選出しています。児童向けとヤングアダルト向けそれぞれの短編と長編作品、絵本、児童図書デザインなどの部門で、トルコ国内の作家・挿絵画家に呼びかけをします。集められた作品を審査員──各部門につき5人の審査員がいます──が選考し、大賞を決めるのです。
審査員は、数か月にわたって各自が候補作品を読み、分析し、その後、一堂に会して『その年の1冊』を選び出すのです。ちなみに、2015年に選ばれた「2014年のヤングアダルト向け長編の1冊」は、ギュンウシュウ出版から発表された、カリン・カラカシュルの作品『松かさ四つ(Dört Kozalak)』(※下に詳細)でした。
──次回は、児童・ヤングアダルト図書協会とトルコの児童書の関わりについておうかがいします。
※Dört Kozalak(松かさ四つ)
Karin Karakaşlı(カリン・カラカシュル)著
ギュンウシュウ出版の架け橋文庫から2014年に発売された。カリン・カラカシュル(1972年、イスタンブル生まれ)のヤングアダルト作品。大学入学試験を巡る若者たちの心の動きを描いた作品。
エムレ、クムル、マリ、シェルザンは、それぞれまったく異なる環境で育った。一切の接点をもたなかった4人は、大学試験の勉強のために訪れた、ある若い教師の家で、偶然顔を合わせることになる。点数や評価というものにふりまわされながらも、4人は勉強以外の知識や友人という存在のすばらしさを学んでいく。
著者のカラカシュルは、ボアズィチ大学を卒業後新聞社に勤務。その後、おもにヤングアダルト向けの作品を発表している。ギュンウシュウ出版では、本作をふくめ著作は3冊。
Serpil URAL(セルピル・ウラル)
1945年、トルコのイズミル生まれ。イスタンブルのウスキュダル・アメリカン高校、アメリカのブラッドフォード・ジュニア・カレッジ、イスタンブルの公立芸術学院(現在のマルマラ大学芸術学部)を修了。広告会社でコピーライター兼グラフィックデザイナーとして活動する。1978年から児童書に携わり、1980年にはミュンヘン国際児童図書館で長期の研修を受ける。1986年、第5回野間国際絵本原画コンクールで佳作を受賞。トルコ国内でも1997年にルファット・ウルガズ笑い話文学賞、トルコ・イシ銀行児童文学大賞を受賞。IBBY会員。
ウィスコンシン州国際アウトリーチコンソーシアムでの児童文学講演会で2003年の講演演者を務めるなど、国際的にも広く活動している。
©Serpil URAL