ギュンウシュウ出版社近況と2023年春の新刊
1.Türkiye Yayıncılar Birliği 2022 Düşünce ve İfade Özgürlüğü Ödülleri / トルコ出版協会2022年思想と表現の自由賞
2023年4月12日、トルコ出版協会2022年思想と表現の自由賞の授賞式が行われ、ギュンウシュウ出版が「出版社部門」賞に選ばれた。
同賞は1995年から毎年、トルコ出版協会によって選出、発表、授与され、トルコが世界的な基準で思想と表現の自由を早期に達成することを目的としている。出版社、著者、書店から各受賞者を選出し、年次の「出版の自由に関するレポート」が一般に公開される。
授賞式はイスタンブルのヤプ・クレディ芸術センターで行われ、出版社部門でギュンウシュウ出版、作家部門でトルコペンクラブ・トルコ作家組合、書店部門ではマラティヤ(トルコ東アナトリア地方)に店舗を構えるフィダン書店が受賞した。ギュンウシュウ出版からは編集責任者ミネ・ソイサルが出席し、トルコ出版協会会長ケナン・コジャテュルクから賞の盾を受け取った。
ミネ・ソイサルは受賞に当たり、以下のようにスピーチを行った。
「私たちは、思想、表現、出版の自由を尊重します。 あらゆる年齢の人びとが本に触れ、読む、もしくは読まないという選択をする権利を、いかなる状況下であっても擁護します。喜びと誇りをもって出版を続けているのです。
ギュンウシュウ出版を培ってきた源は、芸術、科学、創造的精神、文学、詩、哲学への賞賛の精神です。私たちが行っていることは、未来の世代の自由のための闘いです。これは平和で公正で安寧な世界のために、まず自分自身に対する、そして社会全体に対する私たちの誓約なのです」
2.Tüylü Bir Uzaylı Macerası – Halfeti / もふもふ宇宙人の冒険~ハルフェティ
2022年にサブリ・サフィエが発表した『もふもふ宇宙人の冒険』の続編にあたる。4人の仲間と宇宙猫フェリスの冒険の舞台となるのは、トルコ南東部、南東アナトリア地方のシャンルウルファにある、黒いバラで有名なハルフェティ。4人はまた謎の組織と相対することになる。
小学校中学年以上推奨。
宇宙猫フェリスと知り合った冬が過ぎ、夏休みがやってきた。ディレッキ、ルザ、メルトとその妹ベルマは、試験を終え、宿題もなにもない最高の毎日を過ごしていた。なによりも、フェリスと知り合ったことで手に入れた、ピンクとピスタチオグリーンのミニバス「ジェリービーンズ」を使えば、ふつうなら7時間はかかる外国のビーチまでたったの10分で行き帰りできる。
それぞれの両親には、「4人で、危険じゃないところにピクニックに行ってくる」と話していたので、赤く日に焼けた鼻の頭も怪しまれずにすんでいる。ディレッキは遊び疲れて帰ってくると、愛犬のラムセスを抱きしめることにしている。ディレッキのことが大好きなラムセスは、留守番でさみしい思いをしているに違いないから。
ジェリービーンズに乗って世界中あちこちでかけるのは楽しかったが、また事件がおこる。バイク好きの友人ウシュクの姿が見えなくなったのだ。4人が捜索にのりだすと、その謎はハルフェティへと続いていた。そこで待っていたのは、宇宙から見守っているフェリスにも、当然、地球にいる4人にも思いもよらないできごとだった。
作家プロフィール
Sabri Safiye
(サブリ・サフィエ)
1961年、アンカラ生まれ。イスタンブル大学国際関係学科を卒業後、長年、映画業界で助監督、監督、プロデューサーとして活躍する。しばらくのあいだ、アニメーション制作に専念していた。2010年、映画業界を引退後、自身の経験を大学生に伝える活動を行った。その後の10年は料理人をしていた。
2009年から、移民問題、特に女性と子どものためのプロジェクトに積極的にかかわってきた。そのフィールドワークで用いるために書いた児童向け作品『月のうさぎ』は、クロード・レオンの絵とともに2021年、トルコ語とアラビア語で出版された。最初の児童向け小説『もふもふ宇宙人の冒険』(2022)の続編『もふもふ宇宙人の冒険~ハルフェティ』(2023)が最新作として発表された。
執筆者プロフィール
鈴木郁子
(すずき・いくこ)
出版関連の会社に勤務後、トルコへ留学。イスタンブルで、マルマラ大学大学院の近・現代トルコ文学室に在籍し、19世紀末から現代までのトルコ文学を学ぶ。修士論文のテーマは『アフメット・ハーシムの詩に見える俳句的美意識の影響』。
帰国後は、トルコ作品、特に児童書やヤングアダルト作品を日本に紹介しようと活動を続けている。トルコ語通訳・翻訳も行う。トルコ文芸文化研究会所属。 著書に『アジアの道案内 トルコ まちの市場で買いものしよう』(玉川大学出版部)、翻訳に『オメル・セイフェッティン短編選集』(公益財団法人 大同生命国際文化基金)