ギュンウシュウ出版2025年冬の新刊③
1.Yaşasın Kitap! /本にバンザイ!
ミネ・ソイサルが『本なんて!(Eyvah Kitap!)』(2006)の続編として手がけた短編集。32の短編からなる。現代の若者たちの読書週間に影響を与える心理的・社会的条件を描き出している。
小学校高学年以上推奨。
ミネ・ソイサルは、前作の『本なんて!』を執筆するにあたり、1万人を超える学生と彼らの読書習慣や傾向について語り合うという徹底した準備を行った。その結果から受けたインスピレーションをもとに作品を執筆、刊行し、学生のみならず大人の読者からも大きな支持を受けた。
若者の目を通して本と読書の概念に斬新な視点で迫り、若者の読書体験を描いたこの作品は、トルコの読書文化とその発展に関する大きな課題の提示となった。アルバニア語に翻訳もされている。
古典が嫌いだと「思っている」。「部屋に行って本を読みなさい!」と常に言われる。パソコンと本のどちらかを選ばなければならない。本を読んでいると知られたら自分のクールさが損なわれると恐れている。本を読むことでしか心が休まらない。本を読まない家族が自分には休日でも読書を求めてくる。ハリー・ポッターしか読みたくない。先生から提示される課題図書が嫌い。など、読書にまつわる現実のエピソードをもとにユーモラスに描いている。
ミネ・ソイサルは、本書をこの続編として執筆した。これまでトルコ国内で認識されてきた本と読書の概念を刷新するべく、タイトルどおり「本にバンザイ!」をテーマにしている。前作でトルコの読書文化の現状を描いた作者は、今作ではその歩みを進め、若者の人生における本の位置づけと重要性を高めるべくアプローチを試みた。
スマートフォンやパソコンなどのスクリーン依存症と診断された。宿題の準備にAIを用いる。ひとりで長い旅に出ると決める。読書クラブに参加する。地震で大切な人を失った悲しみに向き合おうとする。近所の書店がなくなった。怒りをコントロールするためにセラピーを受ける。ブックフェアを心待ちにする。孤独な移民労働者。いじめられている友人を擁護し味方でいる。読んだ本を通じてキャリアの選択肢を見出す。
こういった状況を背景にした32編の短編が収められている。
編集部は「行間を注意深く読むことで、思いがけない示唆が隠されていることに気がつくことができる」と評している。
作家プロフィール
Mine Soysal
(ミネ・ソイサル)
イスタンブル生まれ。作家、編集者、出版者。1981年、イスタンブル大学文学部古代アナトリア言語・文化学科を卒業。1994年まで、イスタンブル考古学博物館で考古学者、研究者として勤務し、発掘、研究、企画展示に携わる。1996年、ギュンウシュウ出版を創立。
『イスタンブルの物語』(2003)、『アラの行くところ』(2005)、『本なんて!』(2006)、『独りの部屋』(2009)、『エイリュリュの恋』(2001)、『遠く』(2014)、『締め付けられる僕』(2017)などの作品を発表。いずれも人気作品で版を重ねている。中でも『イスタンブルの物語』は、2015年にテレビ番組で紹介された。
2020~2023年、トルコ出版協会児童青少年出版委員会の委員を務めた。トロヤ文化芸術賞の一環として、2025年にオウズ・タンセル児童文学賞を受賞。全国各地で文学・出版セミナーも開催する。
イスタンブル在住。ギュンウシュウ出版の編集責任者として勤務を続けている。
執筆者プロフィール
鈴木郁子
(すずき・いくこ)
出版関連の会社に勤務後、トルコへ留学。イスタンブルで、マルマラ大学大学院の近・現代トルコ文学室に在籍し、19世紀末から現代までのトルコ文学を学ぶ。修士論文のテーマは『アフメット・ハーシムの詩に見える俳句的美意識の影響』。
帰国後は、トルコ作品、特に児童書やヤングアダルト作品を日本に紹介しようと活動を続けている。トルコ語通訳・翻訳も行う。トルコ文芸文化研究会所属。 著書に『アジアの道案内 トルコ まちの市場で買いものしよう』(玉川大学出版部)、翻訳に『オメル・セイフェッティン短編選集』(公益財団法人 大同生命国際文化基金)