企画・編集・制作工房 株式会社本作り空 Sola
 

第13回



1 Uykusunu Arayan Çocuk /『ねむりをさがす女の子』
『ラタ・シバ』などで独特の世界観を描く、イレム・ウシャルの作品。眠れなくなった女の子が、色々な動物を訪ねては、そのまねをして眠ろうとする一晩の冒険のお話。人間以外の動物はどうやって眠るのかを学べるお話になっている。小学校低学年以上推奨。


© Günışığı Kitaplığı

女の子は眠れなくなってしまった。お父さんがお話をしてくれて、大好きなぬいぐるみもそばにいるのに眠れない。ついにお父さんもいびきをかいて眠ってしまった。仕方がないので、窓からはしごをつたって外に出て、自分の「眠り」を捜しに行くことにした。外はまっくら、女の子以外はみんな眠ってしまって誰もいない。
歩いて行くと馬小屋があった。馬と同じように両手と両足で立ってみたけれど、ひっくり返ってしまう。また行くと、枝からコウモリがぶら下がっていた。同じようにしてみるけれど、落っこちてしまう。熊やフラミンゴにも聞いてみたけれど、女の子の「眠り」は見つからない。
イラストレーターのメルヴェ・アルトゲンの挿絵がページいっぱいに広がる、フルカラーの小学生向け絵本。


2 Berk Mucit Oldu /『べルキは発明家』
子どものためのミュージカルの脚本を書いているカーン・エルビンギルの、最初の児童書作品。発明の大好きな少年が巻き起こす騒動。挿絵は、メルヴェ・アルトゲン。小学校低学年以上推奨。


© Günışığı Kitaplığı

最近の発明家は仕事をさぼっているとべルキは思う。10キロ食べたっておなかの痛くならないアイスクリーム、痛くない注射。誰も発明しないじゃないか。父さんが言うには、テレビが勝手に消えて、息子が早く寝るような発明も必要だとか。
母さんは、まだ赤んぼうの弟ジェムを膝に抱いて、ご飯を食べさせながら恋愛ドラマの最終回を観ている。でも一番いいところで、ジェムが食べていたものを床に吐き出してしまって、母さんもべルキもそうじのためにテーブルの下にもぐった。ドラマは見逃した。父さんが帰ってきてジェムのめんどうを見るけれど、ジェムは分からない言葉を言うだけで、いうことなんて聞きやしない。ジェムの金切り声が聞こえる中で宿題をやるなんてできっこない。
そんな普通の毎日を送る中で、べルキは次々と発明をしていく。それがあまりにすごいので、父さんと母さんはべルキを才能ある人たちの学校に入れようと決めた。べルキは、発明家の才能があることを証明するために、一週間で何かを作り出さなくてはならなくなった。


3 Konaktakiler/『お屋敷の人たち』
カリン・カラカシュル著。古い屋敷に入りこんだ子どもたちが、むかしを懐かしむ家の声に導かれて、これまで屋敷に住んでいた家族の歴史を探る。小学校中学年以上推奨。


© Günışığı Kitaplığı

今日も今日とてギュルペリは、おばあちゃんに叱られている。禁止されている古い無人の屋敷に、友だちと一緒に黙って入りこんで、遊んでいたからだ。でも、おばあちゃんだって本当は、あの古い屋敷が好きなのだ。おばあちゃんが子どもだったころ、まだ光輝いていたあの屋敷の話をすると止まらなくなる。ギュルペリは、今日は屋敷の庭について話してもらおうと決めた。
 ギュルペリ、チュナル、ポイラズの仲よし三人組の一番好きなことは、町で「妖精屋敷」と呼ばれている古いお屋敷の庭で遊んだり、崩れかけた部屋をのぞいて回ること。打ち捨てられて廃墟同然の家から聞こえてくるといわれる声だって、ぜんぜん気にしない。ある日いたずら好きたちは、いつもみたいにお屋敷で遊んでいるとき、とてもいやな話を耳にする。でも、まだ希望は残っているらしい。三人は、この古い屋敷と屋敷にまつわる人たちを幸せにしようと動き始める。
 今のイスタンブルでは、アパルトマンがすき間なく並び、高層マンションがどんどん建てられている。その一方で、古い昔ながらの「イスタンブルの家」と呼ばれる木造建築は姿を消しつつある。


© ikuko suzuki 現代のアパルトマンに挟まれた、かつての邸宅


© ikuko suzuki イスタンブルのアジアサイドに残る古い木造の家。出窓が特徴

イスタンブルの古い邸宅を巡る日帰りツアーなどを主催する旅行会社もある。行政は保存事業にも乗り出しているが、区画を丸ごとモダン建築に変えるなどの計画もあり、イスタンブルの住宅事情は複雑である。






執筆者プロフィール



İrem Uşar
(イレム・ウシャル)
1975年、イスタンブル生まれ。マルマラ大学のラジオ・テレビ・映画学科を卒業。2010年、ベルギーのアントワープで、最初の作品『とうだいのひかり』(2011、ギュンウシュウ出版)を完成させる。その後、トルコの児童・ヤングアダルト図書協会(Çocuk ve Gençlik Yayınları Derneği)で多くの賞を受賞。『ラタ・シバ』(2013年、ギュンウシュウ出版)で注目を集める。イスタンブル在住。


Kaan Elbingil
(カーン・エルビンギル)
1971年、トルコの黒海地方の県、リゼ生まれ。ドクズ・エイリュル大学イズミル音楽学校、ビルケント大学音楽学部声楽科を卒業。アンカラとイズミル県立オペラ・バレエで、コーラスを務める。演劇学も学んでおり、ラジオ番組の脚本なども手掛けた。子どものためのオペラ「警察犬ドド」はイスタンブル県立オペラ・バレエによって、2016年から上演された。
最初の児童書作品『べルキは発明家』(2016)の出版をきっかけに、児童書作品、一般小説の執筆を続けている。イスタンブル在住。


Karin Karakaşlı
(カリン・カラカシュル)
1972年、イスタンブル生まれ。ボアズィチ大学の外国語学院の翻訳・通訳学科を修了。1998年に、ヤシャル・ナービ・ナユル若手文学賞を受賞。その後、1999年から精力的に作品を発表している。過去の作品を厳選し、ギュンウシュウ出版で復刻も行っている。
児童書作品、ヤングアダルト作品を発表する一方で、アゴス紙で副編集責任者を務め、コラムの連来を続けている。イスタンブル在住。